小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

MastercardのInterchangeについて

前回記事の続きで、MastercardのInterchangeがどうなってるかを見てみました。

Visa同様に専門用語が説明も無しに飛び交うので大変に読みづらい、それ以上に設定されているレートの裏側にある思想を説明してくれないので、頭に入ってきづらい文書です。それでも、Interchangeとは何か、動画まで作って説明しているMastercardはVisaよりは良心的に思えます。

CharityやAirline等、Visaでは見られないカテゴリーがあったり、B to Bは心なしかMastercardの方がInterchangeが高い様な気はしますが、大枠は同様。実際のTransaction Volumeが分からないと、VisaとMastercard、どっちのInterchangeが高くなりやすいのかはなんとも言えません。開示資料を見比べたら見えてくるんでしょうか。

取引の種類ごと(AirlineとかRestaurantとか)に異なるInterchangeが設定されているので、単純に考えると事業者毎にMastercardは受け付ける、Visaは受け付けない、ということがあっても良さそうです。中華料理屋のオーナーがクレカに払っている手数料を見た時に、MastercardだとInterchangeは2%+0.1ドル、Visaだと2.2%取られるのでVisaは嫌、みたいな感じで。

が、実際問題、事業者のCard acceptanceがVisa vs Mastercardで分かれているケースは稀な様です。Nerd walletにも、”Both are accepted nearly everywhere”、即ちどこでも使えると記載があり、それは皆さんの実感とも合うのでは無いでしょうか。コストコはVisaしか受け付けない、みたいな珍しいケースもあるみたいですが。

多分、Visa/Mastercardがセットで使える様になるのは、事業者にPOS端末やWebでのPaymentを実現するシステムを提供しているAcquirerに依るものだと想像します。AcquirerがPOS端末を売るとき、Visa・Mastercardはセットで売っているんじゃなかろうかと。この辺はチャンスがあれば深掘りたいですが。

一方、カードを使う消費者が、事業者側が払うInterchangeを心配してVisa(or Mastercard)で払ってあげようなんて意思決定をしているはずもないので、このInterchangeのレート設定が主に念頭に置いているのは、Issuer側の意思決定なのだと想像します。ChaseやCitiがカードを発行する時、旅行関連の取引だとx%、レストランだとy%、Interchangeが貰えるというのを踏まえて、Mastercardでクレカを作るかVisaにするか、という判断をするのでしょう。そして、自分のネットワークでカード発行してくれ、決済ボリュームが増えればVisa/Mastercardに落ちる手数料が増えるので、Issuerの反応を踏まえて決済ボリュームを予測し、かつ事業者を怒らせすぎないようにInterchangeを設定する、というのがVisa/Mastercardの仕事なんだと理解しています。

事業者を怒らせすぎない、というのが近年重要になっており、Amazonみたいな巨大な決済ボリュームを抱える企業はネットワークと直接喧嘩して、Visaを受け付けるのを止めるぞ、と強気交渉するパターンもあるようです。さっきのCostcoがVisaしか受け付けないというのも、裏側でVisa/Mastercardとの交渉があったのでしょうし、大きな事業者であればInterchangeを低く抑える、というプレーが可能になりつつあります。となると、Interchangeを元手にポイント還元を行っているIssuerが怒り始める、といった様に、InterchangeはMastercardのHPにもある通り微妙なバランスで成り立っています。ともあれ、大きな事業者をVisaやMastercardが優遇するのは、それで良いのか、という気もしますが。当期純利益率3-4%みたいな会社も珍しくない小売業界に於いて、Amazonは1-2%、その辺の小売企業よりも有利、みたいなことが発生するわけなので。

MastercardのInterchangeを眺めていたら、疑問が色々湧いてきて、寧ろ分かんないことが増えてしまいました。決算関連を中心に開示資料を読めば、もう少し解像度が上がってくるんでしょうか。ともあれ、今日はこの辺で。

後輩とバージニア州のワイナリーに突撃。アメリカ人、休日はこういうところでダラダラ過ごしがち