小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

VisaのInterchangeのルールを読んでみた

久々にペイメント業界自由研究です。ここまでの記事で、世界のペイメントに於いてVisaという会社が世界のペイメントのかなりの部分を牛耳っている凄い民間企業であるというのはお伝え出来た気がしますが、今回は彼らが設定しているルールブックを読みにいきます。日本語どころか英語でも分かりやすくまとまったものが発掘できなかったので、特定の人には結構刺さる記事な気がします。私も解読中なので、随時加筆修正予定です。

今回の獲物は、Visa社のHPに(雑に)貼り付けられているこいつです。こいつが何故重要か。皆さんがデビットカードやクレカをスタバで使うと、スタバ→カード発行会社にお金が流れます。その時、流れるお金(≒Interchange、本当は別の手数料も若干乗る)を定めているのが、この文書。一般消費者の知らない間に事業者は取引額の2−3%をカード発行会社に払っている。そして多くの場合それは販売価格に転嫁され、消費者が負担している。買い物場所がAmazonでも税務署でも近所の中華料理屋でも、Visaのカードが使われている限りこのルールに基づいてお金が流れているので、アメリカ経済に凄まじいインパクトのある文書です(そして、この文書はVisaが使われている他の国々向けにも存在してます)。

Credit Card Processing Fees & Interchange Rates | Visa

ざっと目を通しましたが、Level 2とか、CNPとかの用語が説明も無く飛び交う、読んでいる人に理解させる気のない、素人お断りの文書でした。Visaからすると、儲けサイドであるIssuer(カード発行者)はプロなので解読可能、コストを払う事業者や一般消費者には無理に理解してもらわずともOK、ということなんでしょう。

Interchangeに影響する要素
  • カードの種類
    DebitかCreditか。Purchasing Card(カード残高がキャリー出来ず、特定の商品への支出に制限をかけられるカード)か。一般に、Creditの方がInterchangeが高い(即ち、カード発行会社は儲かり、カード払いを受け付ける事業者の負担額が増える)。
  • カード発行会社の種類(Regulated vs Exempt)
    総資産100億ドルを超える大きな金融機関はRegulatedとの扱いとなり、Debit cardのレートが基本5bp + $0.21に固定される模様です。即ち、デカい金融機関はDebit cardで儲けることが実質出来ない。
  • 使う人(法人 vs 個人)
  • 買う対象の種類
    その買い物がレストランなのかホテルなのか、はたまた公共料金の支払いなのかでInterchangeは変わります。大きな傾向として、生活必需品の色彩が強い項目(公共料金 = Utilityや、政府関係の支払い、スーパー)等は低めに抑えられ、奢侈品の色彩が強まるレストランや旅行関係の出費には高いInterchangeが課されます。
    その辺の思想を説明してくれるともっと分かりやすいのにとVisaには文句を言いたいところですが、私の理解だと以下です。Visaがやりたいのは、「お得感」に応じて消費量が変化する項目、即ち弾力性の高い消費項目についてInterchangeを高くつけて、消費を喚起したい、という話だと思います。何故Interchangeが高いと消費が喚起されるかというと、Interchangeを沢山受け取ったカード発行会社は、それを元手に消費者にボーナスポイント(Reward)を還元して、消費を促そうとするからです。レストランや航空券の予約に使ったらお得なクレカ、皆さんもご存知ではないでしょうか?反対に、ボーナスポイントがつこうが、「沢山払おう」とはならない、公共料金や政府関連の消費はInterchangeは抑えられ、スーパー等も比較的低くなっています。
  • 対面かオンラインか
    CNP(Card Not Present)と言われる、オンラインでの取引の方がコストが高い傾向にあります。これも私の理解に過ぎませんが、オンラインの方がFraud(詐欺)のリスクが高いことが背景と考えています。
  • Visa内のブランド
    一般消費者向けのクレカとして、Visaは3種類を展開しており、Infinite > Signature > Traditionalの順のTierとなっている様です。Tierが高いInfiniteの場合、旅行保険等が充実しており、Interchangeの金額も高くなっています。それだけだとVisaからすると特にメリットがないので、恐らくIssuer/AcquirerがVisaに支払う手数料が高く設定されているものと思われます(想像)。
  • 事業者との規模、個別対応
    VisaやMastercardは基本カード発行会社の方を向いて仕事をしており、カードを受け付け、Interchangeを払っている事業者のことは疎かになりがち。ですが、巨大な事業者だと当然発言力があり、大きな事業者には低めのInterchange適用、ということもあるようです。一般消費者向けのクレカでは、事業規模が大きいスーパーや小売店(最高のTierだと兆円規模の決済金額がある様な事業者)は低めのレートが適用されてます。また、極めて大きな事業者については、これとは別に個別対応がなされることもあるようです。
雑感
  • 消費者向けのクレカ、タクシーやレストランだと、事業者は2.7%ものInterchangeをカード発行会社に支払っています。その分は価格転嫁され、Debitだろうがクレカだろうが現金だろうが消費者は支払わないといけないので、消費者としてはクレカでこの部分を取り返さないと、損していると言えます。クレカやDebitという決済インフラの実現には、現金主義者含め社会全体がコストを負担しているのだ。
  • B to Bのカードの場合、幾つか特殊ポイントあり
    • カード保有者の年間取引額に基づいて、Tierが1から5に分類される。Tierが高い程、即ちカード保有者の取引額が大きいほどInterchangeが高くなる。この背景にある思想は謎。
    • Level 2なる、事業者がカード保有者の税務情報(TIN)等の情報を提供すると、Interchangeが下がる。税務情報を取得できるケースのほうが少ないとは思うけど。
    • CNP(Card Not Present = Product 1)が対面取引(Product 2)よりレート高いのは他のカードと同様。

以上、ざっと読んで自分が理解したところをまとめました。仕事する中で理解が深まる部分もあると思うので、理解が深まったら加筆修正しようと思います。

次、時間が出来たらMastercardやAmexのInterchangeに関するルールも読みたいと思います。Amexはカード保有者の所得が高く金払いが良いのでInterchange全般高く設定されていると想像されますが、VisaとMastercardの違いはやや想像が難しいです。ガリバー企業Visaに対抗する為、Mastercardの方が若干安く設定してたりするんですかね。

今回、マニアックでしたが以上です。