小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

MBAの価値:人生のグリップを握るということ

先日受験生と話していて久々に自分の当初のWhy MBAを説明するということがあったのですが、理由の大部分が爆発四散して破綻していることに気づき、あれ、そもそも自分ってなんでMBAに来たんだっけ?とこの期に及んで考えるということがありました。

MBAって世の中の人が思う以上に高い(2021年の今だと諸々引っくるめて2,500万円ぐらい)し、自分の場合結婚したばかりの妻と離れ離れになっていますし、そんな中授業や就活が思い通りにならないことも数え切れないぐらいあります。前職の総合商社で自分がスタープレーヤーだったなんて思いませんが、仕事は好きでしたし収入は世間で言われている以上に良かったことも考えると、なんで敢えてハードモードを選んだんだろう?とは改めて思います。

FIREへの憧憬

TwitterやFB等を開くと、「FIRE」「コスパ」「商社でWindows2000」「地主が結局最強」「駐妻がロブションに行っていた」等のキーワードがバズっているのを目にします。要は、労せずして経済的に豊かな暮らしをするというのは、多くの人に訴求できるみたいです。そういった人々から見て、Windows2000のオプションを放棄するどころか、2,000万円以上自腹で投じて単身アメリカに渡るMBAは、狂気以外の何物でも無いような気がします。

MBA後にキャリアアップするんじゃないのか?という議論もありますが、商社以上の高収入が見込める仕事(IBDやファンド等)もある一方、期待値ベースで商社を上回る仕事は、こと日本に限ると少ないと思います。

人生のグリップを自分で握る

とするとなんでMBAに来たのか?という話に戻るのですが、畢竟、自分の人生のグリップを自分が握っている、という感覚に尽きるのだと感じています。MBAを通じて好き嫌い・得意不得意についての自己理解を深め、卒業後自分に合った、満足のゆく人生を自分で作っていくということに、MBAが果たす役割は大きいと思います。

それはよく言われる、「MBAに来るとCareer Opportunityが劇的に増える」という話とは寧ろ逆で、世界に無数にある仕事の中で自分に適したものを絞り込んでいくことを、MBAの経験が助けてくれる様な感覚です。この辺り、もう少し説明しましょう。

MBAに行けば何にでもなれる」という幻想

MBAに受かってすぐの頃は、MBA後のPathは経営コンサルや投資ファンド、はたまた起業、それも国を跨いで、と自分は何にでもなり得る様に勘違いしていた時期もありましたが、自分にとっては淡い幻想に過ぎませんでした。実際に入学後に待っていたのは、そういった幻想を一つ一つ、現実というハンマーで叩き潰していくプロセスです。

Kelloggに来ると、Exit経験者もコンサルもバンカーもファンドマンも話を聞くのは途端に容易になりますし、Experiential Learningやインターンシップを通じて仕事を実体験することも可能です。そうしてキラキラツイートでしか知らなかった世界の裏側を見ると、そこで働いている人の優秀さ、競争の苛烈さ、(最近は改善しているとはいえ)労働環境の過酷さ等々を、リアリティを持って知ることになります。夢見る内は良かったのですが、現実を目の当たりにすると「そもそも入社できるのか?」「入ったとして自分より頭の回転が早く長い時間働くことを厭わない人との競争に勝てるのか」そして何より「本当にその仕事したいんだっけ?」と、具体的な疑念が湧いてくることになります。

グリップを握るまで

MBAに対してキラキラした印象を持ってくださる方もいらっしゃいますが、大企業から大した海外経験もなく来ると、気落ちすることも多いのが実態です。地元の中学校で一番野球が上手いからといって、県選抜でレギュラーになれるとは限りません。

七転八倒を繰り返す中で、「自分はこの仕事なら比較的得意だな」「この分野なら長時間でも楽しみながら取り組める」といったものを見つけ、自分に相応しいキャリアを模索する、というのが自分にとってのMBAの経験です。MBAの良いところは必修授業を通じてビジネスに関わる一通りの領域を触れられますし、繰り返しですが就活や同級生との交流を通じて、ビジネスを構成する色んな要素に接点を持つことが出来ます。

中日の井端選手はドラフト下位で入団、後輩の大型新人の福留選手にレギュラーを奪われ、クビ寸前になったところで、守備とバントに活路を見出したそうです(以下記事参照。面白いので是非)。自分のキャリア選びも結構それに近い感覚です。

星野監督についたうそ | その他 | NHK生活情報ブログ:NHK

結論

結局の所、私個人の話で行くと、MBAが世間で喧伝されているようなキャリアアップや収入アップに繋がるかは、正直分かりません。10年後家計簿をExcelでつけている時に、商社に残っていたらもっと貯金あっただろうな、と肩を落とすことになるかもしれません。それでもこれが自分の人生だからとその時言えれば、それで良いのだと思っています。