小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

在米日本人インタビュー:MBAを経て現地のヘッジファンドで働く

アメリカに来る前の経歴について、教えて下さい
アメリカに来る前の海外経験はどのくらいか
  • 幼少期に数年アメリカに住んでいた。高校も短期間アメリカに滞在
  • 大学時代にヨーロッパも経験
アメリカに来る前、英語はどれぐらい出来たのか
  • 幼少期+中高英語で勉強していた為、語学面での心配は無かった
  • 英語で仕事をするのはアメリカが初めて。MBAの前は、英語でのプレゼンや書類作成等は全くやったことが無かったが、大学院の課題を通じて学んだ
今現在はどんな仕事をしているか
  • ヘッジファンドで上場株の投資をしている。アジア株に投資するチームに在籍
  • 一日10時間から12時間程度働いている。ホワイトな仕事だとは思わないが、自由がある。マーケットが空いている間は仕事をしているが、それ以外の時間は、アウトプットさえ出していれば裁量を持って仕事が出来る
  • 日本の同業と比べると、恐らく労働時間は短い。裁量の度合いは会社にも依るが、アメリカの方が、韓国や香港、日本よりも自由な印象
  • 投資対象の規模は基本的に決まっており、新しい企業のソーシングはしない。Coverageが決まっている中で、企業の動向や業績、マーケットの動きを追いかける
  • 日々の仕事としては、投資のアイディアを考えるために、IRやCFOに取材を行い、会社のモデルを作る。その他、セルサイドのミーティングやカンファにも参加する
なんでアメリカに来ようと思ったのか
  • American Dreamを信じており、アメリカにはアップサイドがあると思った
  • いつか大学院に行きたいという思いがあった。大学院に来てみたところ、実際に働いてみたいと思った。日本の大きな組織も経験して良い面もあると思ったが、より自由で、規模が小さいアメリカの組織で働いてみたかった。また、金融の理論面等、マーケットの仕事をする上で、アメリカが最先端だと思った
  • 大学院に行きたいと思ったのは、大学時代の後半を就活に捧げた為、実質大学を楽しんだのは2年半。不完全燃焼感を感じ、自分の分野でハイレベル、グローバルな場で学びを深めたいと、学部生の頃に思い始めた
アメリカにはどんなビザで来たのか
  • F1→F1 OPT→F1 STEM OPTのルートで来ており、直近H1B当選したので、H1Bに切り替える予定
  • 出来れば、H1Bからグリーンカードの申請をしたいと思っている
ビザで苦労することはあったか
  • 年に1回ぐらいビザについて考えることを強いられ、心の余裕が失われていた
日本と比較して、仕事についてどの様に感じているか
  • 日本と比較して、全般的に調整コストが小さいと感じる。アメリカに来て日本の頃より小さい組織で働いているというのもあるが、チーム内での調整に要するコストが小さい。ヒエラルキーの程度が弱く、若手がAさんとBさんにお伺いをする、というプロセスが無い。PMがCIOと話す時も、CIOがPMの言い分を頭から否定することは稀で、意思決定が速く、若手にかかるストレスが小さい
  • 関係性がドライ。仕事での接点がないと、他の部署の仕事内容を把握することも少ない。日本にいた組織ではお互いが仕事内容や量を把握し、仕事が多かったら人を融通したり、ということがあった。そういった部署を跨いだ助け合いがなく、チームごとに独立して運営されている印象
  • プライベートの繋がりは皆無。40代、50代のアメリカ人で子供がいる人が多いことも背景。ジュニアの人数が少ない逆ピラミッド構造で、若い人が遊びに行くという場面も生まれない。コーポレートイベントは年2回。ホリデーパーティーと夏ゴルフコンペ(出席率2割)。ジュニアが多い投資銀行やコンサルとはカルチャーが違うと思われる
  • とはいえ、今後転職する時とか、一緒に働いた人はレファレンス等してくれるとは思うので、人間関係が希薄とは思わない。ただ、出張した時も現地集合現地解散。歓送迎会とかもなく、日本との文化の違いを感じる
アメリカで働く中で、どんな苦労を経験したか
  • Geographyのみならず、IndustryとFunctionも変えたので、Day1から仕事が出来ることを選考で証明するのが大変だった。モデルテスト等は、経歴さえ十分と思われれば、厳しくチェックされないこともある。実態としては、経歴強い人が入社後意外と出来ない、というミスマッチも発生する
  • 一回入社してしまえば、転職は比較的容易だが、最初に入るのが凄く難しい。学歴ではなく、職歴で能力を証明する必要がある。自分自身、同じ時に採用された、業界経験が2年ある人と比べて、長いプロセスだった
  • 入社後は、自分の意思決定範囲をどの程度持つのかについて、難しさを感じている。官僚時代は、職務上認められた領域を上回るのは2割程度ぐらいが限度。自分の領域の外に出ず、報連相する人が褒められる世界観
  • 今の職場では、自分の領域を200−300%広げないと評価されない。最初は何を相談するか、何を自分で決めてよいかという感覚を掴むのに苦労した。チームに入ってすぐの頃は相談を多くする様にしており、ミーティングのアレンジとか、出張の時に泊まるホテルをどうするかとか、保守的に細かく質問していた。3ヶ月ぐらい経過して、いちいち聞かなくて良いことになった。あまりにも聞いてばかりだと、仕事ができないと思われる
  • 今でも報告は頻繁にやっている。報告さえきちんとして大きく間違った意思決定をしなければ許される
  • 最初の3ヶ月、半年、1年で信頼を勝ち取るのが大事。信頼を勝ち取ることで、自分が判断できる裁量が大きくなる。最初に失敗すると何をやっても疑われる。働き始めは凄く仕事に時間を投じていた。この点、日本の組織とは時間の感覚が異なると思う
今後どの様なキャリアにしたいと思っているのか
  • まずはポートフォリオマネージャーになって、自分のポートフォリオを持ちたい。その後10〜20年というスパンでは、自分でファンドを経営したい。ファンドを立ち上げ、若い人を雇うことは、やりがいもあるし社会的にも意義がある。チーム運営・マネジメントの経験をしたい
今後もアメリカに残るつもりか
  • アメリカの労働市場に長期的にいたいと思っている
  • Compensationが高いことが大きい。最近の報道で、ロンドンとUSでは、金融業界で40%程度報酬が違うという記事も出ていた。金融の世界だと、アメリカかヨーロッパかアジアのどこかで働くことになるが、他の地域と比較して、特にBonusの差が大きい。もっと税金が安い都市もあるが、税金の差以上に、報酬の差が大きく、自分の感覚では2倍の差がある
  • また、自分の資産形成を考えると、アメリカは資産が守られている国と感じる。今後社会保障の負担が大きく増える可能性は比較的小さく、今後資産形成をしていく上での、将来の不安が小さいことは魅力的
  • 移民として暮らしやすいこともアメリカに住む理由の一つ。ヨーロッパや日本とは、移民が達成できる限界が違う。移民としての苦労はあるが、比較的少ないと考える
アメリカで働く上で、考え方が変わったことがもしあれば
  • 自分の仕事の透明性を高めること。周囲へのアピールでもあり、周りから何かで責められたときのディフェンスの意味もある。自分の仕事の過程・結論を見えるようにしておくことを意識しており、自分が2−3時間やったことのアウトプットを共有ベースで送っておく等、気をつけている
  • 仕事のモチベーションが凄く高くなった。頑張って働く必要性があるという面もあるが、仕事を頑張るインセンティブがある。日々頑張るとそれ相応のボーナスが得られる。一方で、クビのリスクもある。そういった環境では、仕事に対するコミットメントが高くなる
その他何か一言あれば
  • アメリカでチャレンジすることは凄く良いことだが、とても大変でもある。日本で東大や慶應を出て、就活して、大企業入って、というプロセスに比べるとスムーズにはいかない。日本で10社受けて1社受かるところ、アメリカでは100社受けて1社になることを理解し、期待値を調節する必要がある