何度かこちらのブログでも触れていますが、昨年末から、出身県の高校生を対象とした留学奨学金の立ち上げに動いていました。直近、無事に県庁、県教育委員会経由で募集要項を高校側に通知してもらうところまで至り、一つのマイルストーンに達した感があります。これから書類選考、面接、送金、その後のサポートと続きこれからが本番ではあるのですが、全部終わってから振り返ると色々忘れそうなので、記憶が残っている内に立ち上げに関して感じたことを振り返っておきます。
そもそも何をやっているのか
毎年、出身県の高校生を対象に、50万円×2名の奨学金を出します。留学関連であれば参加するプログラムは指定しませんが、金額的にサマースクールや交換留学の費用に充てることを想定しています。
そもそもなんでやっているのか
嫌な気持ちになる人もいるかもですが、思っていることをそのまま書きます。私は海外留学界隈の、「全て自分の努力しによりここに至った」という空気にはほとほと嫌気がさしています。これは日本人に限らず、インド人も中国人も、アメリカ人だってそうなのですが、大変に恵まれたバックグラウンドから来る、ある種のIgnoranceが存在していると思います。
上記はアンケートに答えたWhartonの学生の1/4がアメリカの平均年収は10万ドル以上だと思うと回答したとの記事ですが、実際に10万ドルなんて低すぎる、と考えているMBA生は全く珍しくないはずです(16万ドルのBase salaryをShitty(クソみたい)と称するのを聞いたことがあります)。日本企業からの社費生が多い日本人MBA生はもう少し目線は低いと思いますが、それでも年収1,000万円以下なんて安すぎて考えられない、という感覚の人が相当数いると思います。金銭は一つの尺度に過ぎませんが、自身の出自の強さ、得られた機会の希少さ、世の中の「普通」と比べて自分はどうなのか、という点に対して無自覚な人は多いです。
人間、自分が見て来たものでポジショントークするものなので仕方ないとは思いつつ、私の出身県に広がる世界観とはかけ離れた世界が存在しており、2つはほぼ交わらずに存在しています。また、情報格差を利用して、留学を希望する若者を食い物にする様な商売さえ見られます。
とはいえ、私1人がブツブツ言っていても何も変わりません。だったら自分でやってみよう、というのが今回の趣旨です。たかが50万円をたったの2名だけですが、サマースクールの参加費用ぐらいはカバーできるお金で、才気と情熱に溢れる高校生に海外を見てもらえたら、と思っています。たとえご縁が無くても、高校生の段階で留学の計画を練り、志望動機を書類や面接で語る経験をしておけば、人生の次のステージできっと海外に出てくれるだろう、とも期待しています。そして、日本の地方の一般家庭から、アメリカやヨーロッパやアジアやアフリカで、アグレッシブに挑戦する若者が1人でも増えたら面白いと思います。私は人の人生について聞くのが好きなので、高校生の苦労や挑戦について毎年聞けるだけでも、お金の価値はあるかな、と思っています。
実際何をやったのか
奨学金という呼び方は大仰な感はあり、実際のところはサラリーマンが自分の稼ぎから高校生(というかその家庭)に、使途を決めてお金を送っているだけです。ZOZOTOWNの前澤社長がTwitterでやっていたお金配りの超スモールスケール版とも言えます。
財団法人等を立ち上げることも初期は少し検討しましたが、登記や報告に関わるコストと手間を思うと、自分の間尺に全く合わないと思いやめました。奨学金と銘打ちつつも法人格は無く、個人で募集を行い、お金を贈るのみです。贈与税の問題が出て来ますが、110万円以内は控除以内の範囲内と整理しています(が、真似される方までの責任は取れないので、これから始める方は個人の責任でやってください)。
マーケティングについて
高校生に対してお金を出したい、という時に一番ネックになるのがマーケティングでした。これがMBA生対象であれば、私費で行く人なんて毎年せいぜい100-200人ぐらいで、MBA予備校経由で募集をかけてもらえれば周知は完了するはずです。大抵の私費生は社会人経験もあり、お金がなくて必死なので、自分で奨学金を調べるでしょう。
一方、出身県に限ったとしても高校生はそれよりも遥かに多いです。お金の問題は彼らが解決しようとも思わないでしょうし(親に駄目って言われたら留学自体諦めて終わりでしょう)、そもそも周知しようにもMBA予備校みたいな共通のチャネルがありません。
上記の背景から、高校の先生経由で周知してもらう以外無い。その為には県庁の人に協力してもらう必要がある、という考えに至りました。直接の繋がりはなかったので、出身高校の先生や県知事の後援会事務所等、方々にコンタクトしました。今回有難いことにこの手の突撃のレスポンス率が100%で、連絡した全ての方が助けてくれたので、県庁の関係部局の方はすぐに発見できました。その後もスムーズで、12月末にコンタクト、2月後半に高校宛の周知まで至ったので、スムーズに動いてくださった県庁・県教育委員会の方々には頭が上がりません。
奨学金自体の設計
県庁の方に連絡する傍ら、奨学金自体の枠組みの設計について相談できる人を何人かあたりました。この点は、大学時代からの友人やMBA界隈の友人に頼ったところ、色々な人を紹介してもらえました。文科省主導のトビタテ留学プログラム等、様々な奨学金に携わる方より、忌憚ないフィードバックを受けたことで、一応問題なさそうな募集要項を仕上げることが出来ました。トビタテ留学プログラムは要項や必要書類をサイトで公開しているので、かなりパクリ参考にしました。
必要資料(生徒用) | トビタテ!留学JAPAN | 文部科学省
高校生向けの奨学金に携わる方から「多くの現場の教師の方は忙しくて募集要項なんて読んでいられない」と聞いたので、Canvaで募集用ポスターも作りました。
こうして作った募集要項、ポスターを県の方との打ち合わせに持ち込み、何度かレビューを経て、内容を詰めていきました。
ここまでを振り返って
まだ何も成し遂げていないんですが、一定の達成感がありました。何でかなと考えたのですが、「やらなくて良い」と「他人のため」の2つを満たす経験は、自分自身初めてだったからでは、と整理しています。大体の物事は
やらないといけない自分のためのこと…大学受験とか
やらないといけない他人のためのこと…納税とか
やらなくても良い自分のためのこと…趣味とかMBA受験とか
みたいに、上記3つに落ちる気がします(括りはざっくりなのをご容赦ください)。奨学金を作るのは面白そうだからとか目立ちたいみたいな気持ちがある点も否定はしませんが、そうはいっても人のためにわざわざ時間を使っている、ということに対する独特の清々しさが存在します。
また、ここまでに至るまで、今までの友人・知人にも沢山助けてもらいました。関わる人に不義理を働くこと無く、Giveし合える関係を作っておくのは改めて感じた次第です。
今後もトラブル等はあるのでしょうが、途中で投げ出さずやり切りたいと思います。