小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

インドについて得た文化理解

ISBまとめシリーズの続きで、インド文化について自分が滞在期間中に感じた点をまとめておきます。

近視眼的なその場しのぎが散見される

ISBの同級生がインド人の問題として「Root cause(根本原因)に手を付けない」と話していることがあり、なるほどと思ったことがあります。個人的な経験でいくと、部屋のWifiの接続が悪いのでなんとかしてくれと話したときに、ルーター自体の設置場所や機材の取替等には踏み切らず、再起動や再設定をしてその場をしのぐものの、翌日同じ事象が再発する、ということを繰り返していました。

Root causeに手を付けないという点からは少しずれますが、留学生の間では、現地学生がグループ課題をサボる為に弄する滅茶苦茶な言い訳はしばしば話題になっていました(提出直前になると、本人が風邪を引いたり、親が吐血したり、叔母さんが亡くなったりするのです)。国際的な資格を売買している業者(Certificateだけ貰えます)もあったりして、どれだけの学生が利用しているかは知りませんが、インド人の盛り盛りのレジュメは正直信用できなくなった部分があります。こういった話も、学問や技能を身につけるといった本来的な目的から外れて、外形的な部分だけ取り繕う、といった点でWifiの話と通底する部分がある様に思います。

なんでこんなことになってるの?とインド人と話すと、大抵インドでは競争が厳しすぎるから、との答えが返ってきます。それは恐らくそうなんでしょうし、日本でのんびり過ごしてきた私には分からない面はあるのだろうと思う一方で、同じぐらい競争が厳しい環境下でも、日本だったらそうはならないのでは?とも思ったりもします。

「Family」で繋がる多様性社会

宗教・言語・肌の色が入り混じるインド亜大陸は、世界で最も多様性に満ち溢れた場所と言っても過言ではない様に思います。その多様性を理解する上で自分がキーワードだと思ったのは、Familyという言葉です。

ISBの同級生と話したときに、インド全体で共有される大切な価値観はFamily bond(家族の絆)だと説明されたことが印象に残っています。実際問題、インド人ほど家族の繋がりが強固な民族を私は見たことがありません。そういえば、Kelloggでもインド人同級生の多くは両親と毎日電話していました(日本だとマザコン扱いされる気がします)。最もそれが顕著に現れるのは結婚で、両親がカースト、学歴、家柄、収入、人柄等々を総合的に見て、子供にとって相応しい相手を見つけてくるのが今尚インドでは主流となっています。

逆に、自分が帰属するコミュニティの外に対しては、帰属意識が弱いと感じることが度々ありました。ISBに来る様な学生は恵まれた出自の人が殆どなわけですが、その一方でこれだけ街中で厳しい貧困を目にするインドにあって、社会課題の解決について見聞きした記憶がありません。日本では大学時代に飲食店や引越し業者でバイトすると伝えたところ、IITではバイトであっても、ブルーカラーの仕事をやるなんて考えられないとの返答でした。多様性故に、「他所は他所、うちはうち」という意識が強く、同じコミュニティの人には大変な親切さを見せる一方で、その外側のことには関心を見せない、という面がある様に思います。

ほとんどの物事は暫定的

決まり事やルールはあくまで暫定的なものとして、その時々で良いと思った方向で決める、というのはインドでよく見る行動パターンです。基本的になんでも交渉しておけば可能性あり、寧ろ交渉しないと損する、ぐらいのマインドセットでいることが正しい様に思います。Wifiが繋がらないから何とかしろと大騒ぎしていたら有線LANケーブルが提供されたり、Chai Point(日本でいうドトールみたいなチェーン店)で友人がChaiを買ったときも、キリの良いお釣りがないと伝えると店員の判断で20ルピー負けてくれたりしていました。

日本人が一番戸惑うのは、時間に関する感覚だと思います。驚くことに、ISBにおいて、グループワーク等少人数の予定でOutlookのInviteを見たことがありません。私が見たインド人たちは事前連絡なんてしても絶対見ませんし、当日、「今からミーティングやるぞ!」と急に誰かが言い始め、Whatsappにワラワラ即レスが続き、本当に20分後にミーティングが開始される、というのが彼らの働き方です。

国の行く末に対する楽観的な見方と、市場経済への信頼

日本と明確に違うなと思った点の一つに、「根本的に多くのインド人は自国の見通しについて楽観的」という点があります。日本が失われた30年に突入した90年代初頭から、インドでは規制改革、外資の参入が一気に進展し、毎年7-8%の成長を見せ続け今や世界経済で大きな存在感を見せる国の一つになった訳です。ISBの学生は生まれた時から国が一本調子に良くなるのを見てきたインドでは初めての世代な訳で、これから経済は益々成長し、自分の所得もどんどん増えていくだろう、と多くの学生が信じていました。

また、そんな中で規制改革を通じて社会の非効率性を解決していくことについて、基本的には良いことだと信じている学生が多かった様に思います。「成長か分配か」というのはいつでも政治の基本的な争点ですが、インドのエリート層は成長を通じて全体のパイを大きくすることを重視している人が多いです。国を担っていく若いエリート達がその様な考え方を共有しているということは、今後の成長にも大きな意味をもつだろうな、と感じます。

まとめ

グダグダ書きましたが、上で挙げた様な文化理解が、将来何の役に立つかは正直全く予想もつきません。が、日本人のインド経験者の話をすると、上記の「その場しのぎ」「物事が暫定的」といった辺りがトラブル発生原因になっていることが多い気がします。事前に分かっているからといってうまく対処できるものとも限りませんが、将来インド人と一緒に働く際には、相手の傾向も理解しながら良い仕事が出来たらな、と思います。