小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

NOLS Trip

春休みに1週間程、NOLS(National Outdoor Leadership School)というNPOが企画している旅行に参加してきました。

The Leader in Wilderness Education

タイ人の友人に誘われて軽い気持ちで参加登録したものですが、渇きを潤す為に水溜りを探したり20キロのバックパックを担いで行軍する等、大自然の中でのサバイバル生活という得難い経験が出来たので、記事にまとめておこうと思います。

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概要

NOLSは米国内の学生(高校生〜ビジネススクール)を主な対象として、自然の中での生活を通じたリーダーシップ養成をミッションに掲げてに活動している団体です。イベントは山岳地帯や砂漠、氷河等世界各地で企画され、参加者は1週間〜半年程度の期間共同生活をすることになります(Gap yearを利用する人が多いとのことでしたが、Undergradの中には単位を出すところもあると聞きました)。

今回私は、3/20-27の期間で、ユタ州南東部の複数の渓谷(Long canyon、Cowboy canyon等)に行ってきました。これらはロッジやトイレ等来訪者向けの設備が整備されたFrontcountryとは異なり、Backcountryと呼ばれるほぼ手付かずの大自然で、衣食住全て自分達で賄う必要があります。こちらを13名のKellogg生と、3名のNOLS instructorで訪問してきました。

苦労したこと

・高重量の荷物を担いでのトレッキング

コース期間は毎日4-5キロ程度離れたキャンプ地を転々と移動していくこととなりますが、食料、水、衣服、調理器具やテント等を詰めて20kg程度になったバックパックを担いで動くこととなります。
Canyonはアップダウンが激しく、舗装されていない道なき道、時には岩場を進むこととなるため、かなりの重労働です。更にはランチタイムを取らず、空腹はドライフルーツ等で満たしながら突き進むことになるため、精神的、肉体的に相応の負荷がかかりました(NO Lunch SchoolでNOLSだと揶揄されることもあると聞きました)。

・衛生面

トイレは木陰に穴を掘って埋める、シャワーは当然無し(自分は持参したアルコールの除菌シートで体を拭いて対応)、水溜りの水を浄化して飲む等、日常生活との衛生面でのギャップがかなりありました。個人的に特に辛かったのは、テント内でコンタクトレンズを変えようとしても砂がどうしても侵入してくる為、毎日装着時に涙が止まらないのがストレスでした。

・激しい気候変動

今回の行動エリアの標高は大凡2,000メートル前後、昼は半袖で動ける日もありながら、夜は氷点下となる日が殆ど。Canyonの気候変化は本当に激しく、期間中に晴天、曇天、雨、雪、ひょう、あられの全てを経験しました。
雨風を凌ぐ木々も少なく、暴風が吹き荒れ雪がテントの中に侵入する中、テントのジップが壊れた夜は泣きそうになりました(テントを共にしたタイ人同級生が「お母さんに教えてもらった技」でペンチを使って直してくれました)。

こういった苦難を同級生と共にする中で、ストレス耐性が高まった気がすると共に、友情が深まった様に思います。

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良かったこと

・in-personでの学生同士の交流

旅行前にCivilizationから離れろ、との指示があり、学生はスマホ等通信機器を持たずに参加しました。Zoom中心の生活だったのが逆の極へと一転、四六時中顔を合わせて暮らす生活が送れたのは大変貴重な経験だったと思います。 特に、私自身の交友関係は留学生中心、アメリカ人学生のコミュニティにあまり入れていなかった中、「アメリカ人学生は国外に目を向けてくれていないのではないか」とやや被害妄想じみた距離感を感じていたのが、今回の旅行で大きく考えが変わりました。
ある日、1人の学生が「日本語を教えてくれ」と来たので、(今思うと相当雑ですが)日本人は「どうも」って言いながらお辞儀しとけば上手く解釈してくれると伝えると何故かこれが流行り、皆でどうもと言い合う光景が何度も見られました。その他にも、「JapanのKeiretsu(財閥)って一体なんだ?」と、日本に興味を持って話題を振ってきてくれる等、フレンドリーなメンバーに恵まれました。
接点の少ないコミュニティに対しては大味すぎる一般化をしてしまうのが人間の性だと思いますが、アメリカ人学生個々人の様々な人間性に触れたことで、彼らのことをより深く知りたいと思うようになりました。そして、今まで彼らのコミュニティに入る努力を怠っていたことを反省しました。

・英語でのコミュニケーション能力の改善

8日間に渡り完全に日本語から離れ、全てのコミュニケーションを英語で行っていた為、英語能力に相応の改善があったと感じます。日記も英語でつけ、英語で考えることを徹底していた為か、期間中は夢まで英語になりました。
それ以上に大事な点として、現地学生とのコミュニケーションに示唆が得られたのが個人的には大きな収穫でした。ハイキング中、一度も会話したことが無かった1人の学生が「第二次世界大戦での日本軍について、日本でどのように教えられているのか」と、いきなりcontroversialな話題を放り込んできたことがありました。少し話してみると、アメリカは各方面への配慮の為センシティブな話題を回避する傾向があるが、逃げずに真っ直ぐ目を見て話せば腹を割った話が出来る様になるというのが、彼の信念とのことでした。勿論礼節を保つのが前提ですし、それでも聞きづらいこともありますが、彼の話を聞いてからはこれまで躊躇していた話題にも踏み込んでいくようにしました。結果、アメリカ人学生との関係が深まったように思います。

アメリカ流のリーダーシップ教育

日中のハイキングは5-6人が1グループとなって行われますが、毎回別の人がリーダーとしてルート設定や体調/時間の管理等を担当することになります。場面場面でinstructorからチームとしての意思決定の方法論やリーダーシップについて話があり、大変勉強になりました。自分自身は地図を読むのが苦手な為リーダーを務めるのか不安だと相談したところ、”Leadership is about using the resources available to you”と、自分自身で抱え込まないように助言を受け、ハッとさせられることがありました。
それ以外にも、アメリカ流のリーダーシップ教育で揉まれた同級生がどの様にメンバーを鼓舞し、目標達成していくのか間近に見ることが出来たのは大変貴重な経験でした。 また、上述のタイ人の友人は、持参した一眼レフカメラでカメラマンを積極的に買って出る、怪我をした人に自分のアンメルツヨコヨコを塗ることを持ちかける等、弁が立たない中でも存分に存在感を発揮していて、彼の姿勢からも学ぶものがありました。

大自然の中でのサバイバル能力

バックパックと身一つだけで1週間生活し、水分の調達や料理、最大限荷物を詰める為のパッキング技術、地図の読み方やハイキング中のテクニック等、学びは多々ありました(次どこで使うかは不明ですが)。

・圧巻の景観

最後に、見渡す限り果てしなく広がるcanyonの美しい景観を楽しむことが出来たことは、一生の思い出になりました。特に、canyonの底から見上げた無数の星は、忘れられない景色になりました。ひとしきり景色を見た後でテントに戻ると、上述のタイ人の同級生から、「カメラを持っていない時は数十秒かけてゆっくり瞼を閉じ、閉じた後の瞼の裏に景色を焼き付けるように念じれば、その光景は死ぬまで記憶に残る」と教えてもらい、再び外に出て景色を目に焼き付ける、ということもありました。 その時見た夜空は、写真には残っていませんが、MBA卒業後も忘れられない景色になる気がします。