小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

秋学期の授業振り返り

新しいことだらけで長く感じた秋学期も今週で期末テスト全科目が終了し、後は成績発表を待つのみとなりました。自分は結構テスト/成績を気にしてしまう性分ですが、周囲を見ると成績に対するスタンスは様々で、オンラインで受験できることをTake chanceしてテスト期間丸々コロラドにスキー旅行に行っている人も一定数いますし、「ビジネススクールでの成績は自己満足に過ぎない」と切って捨てるチリ人学生もいました。

彼らの言うことには一定の合理性があり、Kellogg含む多くのビジネススクールは学生の成績非開示の方針のため成績は就活には基本的に影響しないですし、多くの学生にとってMBAが最後の学校となるため、UndergraduateまではGPAを高めることに血道を上げてきた多くの学生も、MBAでは頑張るインセンティブを失ってしまうようです。

Kelloggの教授陣もそのあたりのことは当然理解しており、Financeの教授も"You're not learning for grades, you're learning for life"と繰り返し話しているあたり、ビジネススクールはAcademicではなく、実学の学校なんだなと改めて感じます。ということで、今回は成績云々以上に、今学期の各授業で今後の人生に役立つTakeawayがあったか、という観点で振り返っていきたいと思います。

Business Strategy

マイケル・ポーター教授の競争戦略論をベースに、企業が長期的に収益を上げるための戦略とは?という大きな問いを考える授業でした。ある会社がなんで儲かっているのか?、もっと儲かるには何をすべきか?というのを経営理論をベースに説明、学生同士でDiscussionをする授業となっており、良い戦略を考える上での基本的なフレームワークを身につける良い訓練になったと思います。

いわば、バスケのレイアップシュートの正しいやり方を色んな角度から教えてもらった様な状態で、実際に出来るかは、ビジネス現場での反復訓練が必要にはなると思われます。ただ、今までの自分では企業を分析するといっても、財務数値を見る+アナリストの言っていることを鵜呑みにするぐらいしか出来なかったところ、フレームワークに則って自分の頭で大外れなく結論を出せるぐらいにはなったと思うので、成長幅はそれなりにあった様な気がします。

5 forcesを見て業界としての収益力を確認する(例:航空会社は同業他社との競争、代替交通手段との競争に晒される中、収益確保が難しい)、同じ業界内で優位なポジションを築けているかを見る(cost/benfit/nitchのどの戦略をとっているか、各アクションの整合性はどうか)、等々、チェックリスト的にポイントを見て、第三者視点で企業に関して自分なりの仮説を形成するのに役立つ授業でした。

Business Analytics Ⅱ

教授は熱心で皮肉の利いたユーモアセンスのあるイタリア人で、面白い授業でした。初回の授業で、「データ分析をする時にSTATAを使うかRを使うかで迷うのはバイクの色で悩むようなものだが、Excelを使うのは四角いタイヤで走る様なものだ」とのお話があり、四角いタイヤのスキルしかなかった自分はある種の危機感をもって授業に臨むこととなりました。

統計というよりも授業名の通りビジネス課題をデータで分析する、というコンセプトで、STATAという統計ソフトでひたすら重回帰分析をしました。重回帰分析自体はExcelでもやったことがありましたが、統計的な正しい分析方法、解釈の仕方を0から学べる科目だった為、有益だった様に思います。具体的なTakeawayは以下。

  1. コントロール出来ない要素を排除した評価付け
    例えば、証券マンの営業成績を評価する際に売上の絶対値で評価してしまうと、担当地域の人口や平均所得の差によって有利不利が出てきてしまいますが、こうしたコントロールできない要素の影響を排除した上で評価付けをする手法を学びました。ヘッジファンド投資銀行のトレーダーの運用成績はα(マーケット全体の変動による影響を除いた運用成績)で見られると聞いたことがありますが、世の中その様になっていない業界がほとんどだと思いますので、結構応用範囲があるスキルだと思っています。
  2. ベストプラクティスの特定
    1.とは異なり、個人がコントロールできる要素も含めて重回帰分析を行い、KPIに与えるインパクトを特定する手法を学びました。証券マンの例で行くと、メールや電話、手紙等の営業アプローチがある中で、どのアプローチ重視で行くと営業成績が上がりやすいか?といったことをデータから判断する手法を学びました。
  3. 特定施策のKPIへのインパクトの特定
    2.の分析は理解しやすくわかりやすい一方で、KPIに影響する要素がわかっていないと正しく分析できないという欠点があります。証券マンの売上に、実はFinanceの勉強時間が影響していたとして、その事実を見過ごしたまま分析すると不正確な分析結果となります。
    そこで、データセットのランダム化処理というのを行い、重回帰分析を実施すると、特定施策のインパクトを切り出すというアプローチも学びました。授業では、コンサルタントを入れた前後での生産性の上昇幅の分析を行いました。
Finance Ⅰ

企業やプロジェクトを定量的に評価することを目的とした授業でした。Financeは大学・実務である程度経験があるためボンヤリと聞いていましたが、企業価値評価(DCFやマルチプル、Free cashflowの計算等)の基礎で理解があやふやだったところを補強してくれた様に思います。

授業以上に、宿題として出されるグループワークの課題が結構難しく、授業以上に難しい課題を与えて学生をStretchさせ、評価は甘くつける、という日本ではあまり見られないアメリカの授業スタイルに慣れるのが大変でした。毎週の様に取り組んだグループワークはアメリカ人3人、メキシコ人1人と、当初はコミュニケーションで難儀しましたが、答えをもった上できちんと伝えれば自分の意見を汲んでくれるナイスガイばかりで、Global環境での仕事の仕方みたいなものを学べた様に思います。

Financial Reporting and Analysis

必修の授業をWaiveして履修した、発展的な内容の会計の授業となります。必修科目の場合減価償却とは…等基本コンセプトから学ぶと聞きますが、こちらはそれらの理解をベースとして、企業はどの様な項目をmanipulateして会計数値にお化粧をしていくのか?という点を明らかにしていくことに主眼がありました。

正直米国会計基準学んでもな…という声が頭の片隅にはありましたが、米国の有報(10-K)を見ることは今後もきっとあると自分を奮い立たせて授業に臨みました。正直今後のキャリアでどう役立つかいま時点ではイメージできませんが、ありがちな不正を学んだのは知的好奇心としては面白かったです。

例:M&A後、減価償却があるAssetの評価を切り下げてのれんに上乗せし、償却によるPL負担を減らす、等

全体を通じて

授業全体を通じて感じたのは以下2点です。

  1. 分析的、数理的な科目ほどやりやすい
    Finance、Analytics、Accountingは何れも問いに対する答えとロジックが自分の中で整理できていれば十分ディスカッションに参加できますが、答えが一意に定まらず自分の意見と事例を投げ合う、Strategyの様な授業は厳しいと感じました。授業内やグループワークでの発言機会という点でもそうですが、テストや課題も大量のReading+Writingをすることになるため、授業を通じて英語力(Reading/Listening/Speaking/Writing)が授業内でのパフォーマンスに与える影響が大きかった様に思います。
    同級生はアメリカ型の教育環境でトップを走ってきた学生ばかりなわけで、正直ソフトな議論はこの2年間で追いつける様には思えないので、自分の得意な土俵で戦うことが大事になりそうです。そこで、今後何かプロジェクトに取り組む時は分析的/数理的なTaskを取りに行こうと思います。
  2. ドキュメントでのアウトプットは比較的貢献しやすい
    グループワークをやっていた当初、Wordでのアウトプットを出すときもNativeの方が早いし良い文章を書けるだろうと及び腰になっていましたが、そうこうしている内に自分が何の価値も出せないままグループワークが終了という場面が何度かありました。
    一度Write-upの全体を自分でやってみたところ、ほとんど修正無いままチームの成果物となったこともあり、多少表現がAcademicでなく文法ミスがあったとしても、伝わる文章が書けていれば良いのだなと気づきました。たくさん書いている内にスピードも上がるでしょうし、グループに貢献しているのが目に見える作業なので、来学期以降はより文章でのアウトプットを出していきたいと思いました。

今学期の成績自体は恐らく凡庸(平均少し上ぐらい?)に終わった気がしていますが、成績以上に、どんなTakeawayがあったかは今後も定期的に振り返りつつ、ブログに残しておきたいと思います。