小市民ブログ

KelloggってMBAを出てアメリカで移民サバイバル生活をしています。サウナが好きです

MBA受験とバックグラウンド

スポンサー有無は(恐らく)結果に影響している

まず、こちらのグラフを見て下さい。

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こちらのグラフは、AGOS社のHPより2014年以降の米国トップ7校(通称*M7)のMBA受験の結果を取得し、GMAT/TOEFLスコアを社費・私費に色分けしてプロットしたものです。社費・私費共に幅広く分布しているものの、平均的にはGMAT、TOEFL共に大きな差が無い様に見えます。こちらを見て、社費・私費で受験結果に大きな差が有るようには思われないと昨日ツイートをしました。

*M7は、HBS、Stanford、Wharton、MIT、Columbia、Booth、Kelloggの7校

(元データはこちらから取得。AGOS様、有難う御座います。)

www.agos.co.jp

これで自分の中では結論が出ていたのですが、とある方より不合格者も含めて分析しないと妥当ではないとのご指摘を頂き、今日再びデータとにらめっこをしておりました。先ず、先程の散布図の中に不合格者を追加し、更に細かく分布を比較するために箱ひげ図を作成しました(箱の中が四分位点、横棒が下限/上限です)。

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こちらから私が読み取ったのは以下です。

  • GMAT・TOEFL共に不合格者の多くは合格者のレンジにすっぽり収まっており、スコア面で合格者と並ぶレベルの不合格者が相当数存在
  • GMATは社費合格者平均で10点弱、TOEFLは私費合格者が2点程度上回っているが、いずれも合格者の中でばらつきがあり、社費/私費合格者間で決定的な差は無い

即ち、散布図、箱ひげ図からは合格圏内の中で社費・私費共に多くの受験生がひしめき合っている状態で選考が行われ、結果として合格者・不合格者共にGMAT/TOEFL共に差がついていない状況であることが示唆されています。そんな状況を頭に入れた上で社費/私費合格者の具体的な数値を見ていくと、(今更ながら)社費/私費で合格/不合格の割合が大きく異なることに気が付きます。社費は107÷258 = 41.4%、私費は34÷119 = 28.6%と社費は私費の1.5倍近くの確率で合格を勝ち取っていることが分かります。とすると、実際のところは「合格者間で社費・私費でスコアに差がないから社費/私費は関係ない」ではなく、「スコア面で同レベルのCandidateが沢山いる中で、社費からより多くの割合で合格者が出ている」というのが正しい状況認識と思われます。

【社費合格者】      【私費合格者】

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【社費不合格者】      【私費不合格者】

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性別も(恐らく)結果に影響している

性別についてもスポンサー同様、合格者のスコアの分布を見る限りは男女で顕著な差があるようには見受けられません。

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しかしながら、全体の合格率で見てみると男性・女性で大きな差が見られます。男性が124 ÷ 354 = 34.8%の合格率となるのに対し、女性は31÷52 = 59.6%と、1.7倍程度の合格率となっています。こちらも状況はスポンサー有無と恐らく同じで、Candidacyが同程度の受験生がひしめく中で、女性の方が学校側から選好される傾向があるものと思われます。

【男性合格者】      【女性合格者】

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【男性不合格者】      【女性不合格者】

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分析の限界について

今回の分析にはデータの都合上、以下の様な限界があります。

  • 回答者はAGOS利用者に限られるため、網羅的なデータではない。かつ、個々の受験生が未回答としている項目も見られた(未回答の場合はデータセットから削除)
  • データは自己申告の為誤りの可能性が否定できない
  • 合格者・不合格者で回答率が異なる可能性が高い。仮に全て不合格となった場合にAGOSの合格者アンケートに協力する可能性は低く、一定程度生存者バイアスがかかっている可能性が高い
  • 社費生は社費制度がある会社に限定され、かつ恐らく私費生より年齢層が高いため、社費/私費で合格者のバックグラウンドが均質とは言えない

本来的には不合格者含めてより網羅的なデータが有ると望ましいのですが、MBA各校が全ての受験生データを公開でもしない限り入手は不可能なため、現実的に完全なデータを使って分析する日が来ることは無さそうです。尚、「スポンサーや性別、スコア以上にエッセイやインタビューの出来の方が大事だ」というご指摘も受けそうですが、エッセイ/インタビューについては社費・私費共に同条件の分析になっているため、特定のバックグラウンドが有利という結論には影響しないと考えました。

最後に

今回の分析で特定のバックグラウンドの方を貶める意図は全くなく、見てきた通り合格されている方の殆どはスコア面でも素晴らしいパフォーマンスを挙げた方ばかりだと思います。一方、同じレベルのCandidateのプールがある中で、特定のバックグラウンドの方が学校側から好まれやすいとは言えるのではないかと思います。

また、私費・男性の合格者や社費や女性でも不合格の方もいる為、バックグラウンドだけで決まるものでも無く、エッセイやインタビューで挽回できる可能性も存在すると考えて良いでしょう。GMATやTOEFL足切りとして機能した後でも合格圏にいる受験生が多数存在し、その上でバックグラウンド/インタビュー/エッセイで勝負が決まる、というよく言われる話を裏付ける分析結果だったと思います。

受験生の方々におかれては、変えられない自分の状況を嘆くというよりは、自分の持っているカードを踏まえた戦略を立てて、合格を掴み取って頂くことを祈っております。

最後に、分析についての反省としては、成功/失敗両面の事象がある場合、成功側だけの分析では不完全な可能性があるという気付きがありました。また、Excelと違ってPythonの場合特定のデータセットの大きさに意識が向かなくなりがち(確率を忘れがち)なので、分析時に必ず確認する癖を付けたいと思います。あとは、合格/不合格みたいな1 or 0の事象について、個別要因の寄与度を推定するモデルが作れると良いなと思ったので、時間が出来たら勉強したいと感じました。

本日は以上です。

東京都内のサウナの分析

ここ1ヶ月あまりPythonの勉強に注力しており、中でもWeb scrapingという技術で、インターネット上のデータを一気に取得する手法を中心に勉強しておりました。本日は、どうせなら自分が一番関心のある領域=サウナのデータを収集した上で、分析してみようという記事です。インターネット上で少し探してみたところ、食べログTwitterについてScrapingを活用して分析したサイトは見つかるものの、サウナについては日本語・英語ともに見つからなかったので、新しい試みの様に思われます。

データの取得元は上記「サウナイキタイ」というサイトでして、サウナの室温や水風呂の温度等基本情報の他、「イキタイ(=訪問したいと思っているユーザーの数)」「サ活(=実際に訪問したユーザーの口コミ数」で人気度が測れる仕様の為、定量データ分析には格好の獲物です。 

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このサイトに対してScrapingをかけたところ、登録されている東京都内の全サウナ750件のデータベース(上図)が完成したので、こちらを見ていきたいと思います。尚、男女共に利用可能な施設とするとグッと数が減ってしまう為、今回は男性が使えることを条件に分析を行いました。

サウナーは台東区に住むべし

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まず、東京都内の市区町村別に店舗数を見ていくと台東区がトップ、大田区板橋区が続いています。下町の印象があり、かつ銭湯が多い印象のある区が上位にランクインしている様に見受けられます。

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続いて、イキタイ数、サ活数を市区町村別に集計していくと、店舗数とはかなり異なる結果になりました。イキタイ、サ活共に台東区が1位なのは同じですが、2位に豊島区、3位に墨田区がランクインしています。豊島区の場合かるまるやレスタ、墨田区はニューウィングや黄金湯等の超人気施設が複数あることが要因となっていそうです。
いずれにせよ、店舗数が多いことに加え北欧やサウナセンター、萩の湯等超人気施設を複数擁する台東区が最強ということは間違いなさそうです。ちなみに、台東区からトップ50入りした施設は以下8施設です。

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サウナの室温を上げるより水風呂の温度を下げよ

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まずイキタイ数とサウナ室温についての散布図(左図:全サウナ)を見ていくと、90度近辺に一番大きな山がありますが、分布は40度~120度までかなりばらつきがあります。イキタイ数のトップ50に絞ってみると(右図)、人気50店についてはほとんど全てが80度以上、特に90度-100度に人気が集中しているのが分かります。イキタイ数トップの北欧が110度であることが目立ちますが、温度が高いほど行きたい数が多いという訳でもなさそうです。

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水風呂については全サウナ(左)と人気50店(右)の分布の違いがより顕著で、グラフ上部のヒストグラムを見ると世の中一般のサウナは20度近辺に数が一番多い一方、人気50店は14-16度に偏って分布しており、嗜好の違いが明確です(今更ながら、サウナ興味無い方は知らんがなという感じだと思いますが、20度と14度では天地がひっくり返るぐらい全然違います)。

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最後に、各項目の相関係数マトリックスを作り、ヒートマップで見ていくと、(かなり緩いものの)サウナ、水風呂の温度とイキタイ/サ活には一定の相関があるようです。サウナ室温×イキタイは0.17である一方、水風呂温度×イキタイは-0.33なので、このデータだけを見ると、サウナの温度を上げるよりも水風呂の温度を下げた方がサウナーの人気を集められると言えそうです。

ロウリュ、外気浴も大事

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最後に、外気浴/ロウリュの有無とイキタイ数の関係を棒グラフにしてみました。サウナ好きの方以外でここまで読んでる方はいないと思う一方で一応解説すると、外気浴はサウナ・水風呂を経た後の休憩スペースの有無、ロウリュはサウナ室内で蒸気を発生させ、タオル等で仰いでくれるサービスの有無を示しています。

外気浴・ロウリュを実施しているサウナは、それ以外の項目(サウナや水風呂の質等)もレベルが高い可能性が大きいので純粋な因果関係とは言えないとは思われるものの、相関関係は明確にありそうです。特に、ロウリュが有るサウナは無いサウナと比べて、平均して約6倍のイキタイを集めていました。

最後に

ここまでの分析を踏まえると、サウナ経営者はサウナの室温90度近辺・水風呂14-16度・ロウリュ+外気浴ありの施設を作れば、サウナーの人気を集められそうです。サウナーの方からすると当たり前だと思われる気がしますが、当たり前のことをデータで示すのがデータ分析の意義と聞いたことがあるので、まあこんなものでしょう。

もう少し色々分析するとしたら、分析対象を広げる(大阪や神奈川等)、回帰分析等異なる分析をする(より定量的にイキタイ獲得の為重要な要素を示す、過小評価/過大評価されているサウナの特定)といったことができそうです。如何せん、Pythonのスキルだけではなく、自分の統計分析スキルもボトルネックになっておりますが、今後も色々やっていきたいと思います。Pythonマスター方やサウナーの方、何かお気づきの点あれば是非教えて下さい。

PythonでTwitterの分析をしてみよう

かなり長いことブログをサボってしまっておりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。Evanstonは2月上旬のマイナス20度前後の地獄の寒さも峠を越え、ここ数日は10度弱の過ごしやすい天気です(にしても寒暖差激しすぎだ)。

以前Kelloggの在学中に何をするかということをまとめていましたが、その中の一つとしてData Analyticsを掲げていました。定量分析をして示唆を出すというのは実は自分のキャリアの早い段階からのテーマの一つで、前職の日系企業で仕事をする中でも、データを見て統計的に意思決定すればもう少し稼げるのにな、と思う場面に度々遭遇しました。しかしながら、定量分析を実務に落とし込む為にはBusiness・Analytics両面の理解が不可欠となる一方、2つとも理解した上で業務改善していける人は極めて希少というのが私の認識です。自分でCodeをどの程度書くかは別として、データを活用して意思決定の精度を高めていくのは、様々な業界に共通するテーマに思われるため、MBA在学中に注力して勉強する予定です。

その中でWhy Python?というところですが、何人かに相談したところ、Data Analytics分野ならPython一択との声を聞きました。比較的習得が容易(シンプルな構造+ネット上にリソースが多い)・汎用性が高い(データの取得から統計分析、機械学習まで一気通貫で出来る)あたりが理由となる様で、基本的にはPythonに注力していこうと思っています。

Twitterの分析

さて、ここから本題のTwitterの分析です。別にTwitterじゃなくても良かったのですが、まとまった定量データが入手できて、わかりやすい示唆が出せそうなのがTwitterだったので選びました。過去6ヶ月分のツイートのCSVファイルをTwitterからDL、Pythonで結合・分析したデータが以下です。分析にあたっては以下HPを大いに参考に(というかほぼパクリ)させて頂きました。

ツイート時間

全ツイートを棒グラフに表してみたところ、夜にツイートが増える傾向でした。午前中・夕方は作業時間との位置づけの為ツイートは控えているつもりでしたが、結構Twitterを見てしまっているようです。6時台に増えているのは、起床後、溜まっているリプライを返しているのが要因と思われます。

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インプレッション、いいねの相関

左はインプレッション(x軸)、いいね(y軸)の散布図+回帰分析をしており、右側ではいいねやリツイート等の定量項目の相関係数をヒートマップに表したものです。傾向としてインプレッションが多い程いいねが多いというあたりまえ体操な結果になりました。外れ値を見ていけば示唆があるかもですが、面倒なので省きます。

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文字数といいねの関係

30いいね以上:A、5以上30未満:B、5未満:Cとしてツイートを評価し、文字数を縦軸にとって棒グラフにしてみました。分け方がざっくりなのはともあれ、傾向としては文字数が多いほどいいねも多くなる傾向があるようです。

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テキスト分析

上記のA、B、Cのツイート群それぞれを単語に分解し、出現頻度が多い順30個ずつ並べてみました(助詞や助動詞は除きました)。すると、A、Bの上位にMBAが入っており、またAの真ん中辺りにKelloggもランクインしておりました。5いいね未満のカスツイート群(C)には登場していないので、MBA、Kelloggが含まれるツイートは安定的にいいねがそこそこ取れている模様です。

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MBAとKelloggが含まれるツイートと、それ以外という形でも比較してみました。いずれも、MBA/Kelloggが含まれる方がいいね数は顕著に高く、特にMBAについては含まれる場合、そうでない場合で2倍以上の差がついているようです。一応MBAの情報発信アカウントとして機能していると考えても良いのでしょうか。

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まだまだ初心者ですが、基本的なデータの加工、グラフ化、分析の流れはなんとなく把握できたので、留学中は継続していけたらと思います。

秋学期の授業振り返り

新しいことだらけで長く感じた秋学期も今週で期末テスト全科目が終了し、後は成績発表を待つのみとなりました。自分は結構テスト/成績を気にしてしまう性分ですが、周囲を見ると成績に対するスタンスは様々で、オンラインで受験できることをTake chanceしてテスト期間丸々コロラドにスキー旅行に行っている人も一定数いますし、「ビジネススクールでの成績は自己満足に過ぎない」と切って捨てるチリ人学生もいました。

彼らの言うことには一定の合理性があり、Kellogg含む多くのビジネススクールは学生の成績非開示の方針のため成績は就活には基本的に影響しないですし、多くの学生にとってMBAが最後の学校となるため、UndergraduateまではGPAを高めることに血道を上げてきた多くの学生も、MBAでは頑張るインセンティブを失ってしまうようです。

Kelloggの教授陣もそのあたりのことは当然理解しており、Financeの教授も"You're not learning for grades, you're learning for life"と繰り返し話しているあたり、ビジネススクールはAcademicではなく、実学の学校なんだなと改めて感じます。ということで、今回は成績云々以上に、今学期の各授業で今後の人生に役立つTakeawayがあったか、という観点で振り返っていきたいと思います。

Business Strategy

マイケル・ポーター教授の競争戦略論をベースに、企業が長期的に収益を上げるための戦略とは?という大きな問いを考える授業でした。ある会社がなんで儲かっているのか?、もっと儲かるには何をすべきか?というのを経営理論をベースに説明、学生同士でDiscussionをする授業となっており、良い戦略を考える上での基本的なフレームワークを身につける良い訓練になったと思います。

いわば、バスケのレイアップシュートの正しいやり方を色んな角度から教えてもらった様な状態で、実際に出来るかは、ビジネス現場での反復訓練が必要にはなると思われます。ただ、今までの自分では企業を分析するといっても、財務数値を見る+アナリストの言っていることを鵜呑みにするぐらいしか出来なかったところ、フレームワークに則って自分の頭で大外れなく結論を出せるぐらいにはなったと思うので、成長幅はそれなりにあった様な気がします。

5 forcesを見て業界としての収益力を確認する(例:航空会社は同業他社との競争、代替交通手段との競争に晒される中、収益確保が難しい)、同じ業界内で優位なポジションを築けているかを見る(cost/benfit/nitchのどの戦略をとっているか、各アクションの整合性はどうか)、等々、チェックリスト的にポイントを見て、第三者視点で企業に関して自分なりの仮説を形成するのに役立つ授業でした。

Business Analytics Ⅱ

教授は熱心で皮肉の利いたユーモアセンスのあるイタリア人で、面白い授業でした。初回の授業で、「データ分析をする時にSTATAを使うかRを使うかで迷うのはバイクの色で悩むようなものだが、Excelを使うのは四角いタイヤで走る様なものだ」とのお話があり、四角いタイヤのスキルしかなかった自分はある種の危機感をもって授業に臨むこととなりました。

統計というよりも授業名の通りビジネス課題をデータで分析する、というコンセプトで、STATAという統計ソフトでひたすら重回帰分析をしました。重回帰分析自体はExcelでもやったことがありましたが、統計的な正しい分析方法、解釈の仕方を0から学べる科目だった為、有益だった様に思います。具体的なTakeawayは以下。

  1. コントロール出来ない要素を排除した評価付け
    例えば、証券マンの営業成績を評価する際に売上の絶対値で評価してしまうと、担当地域の人口や平均所得の差によって有利不利が出てきてしまいますが、こうしたコントロールできない要素の影響を排除した上で評価付けをする手法を学びました。ヘッジファンド投資銀行のトレーダーの運用成績はα(マーケット全体の変動による影響を除いた運用成績)で見られると聞いたことがありますが、世の中その様になっていない業界がほとんどだと思いますので、結構応用範囲があるスキルだと思っています。
  2. ベストプラクティスの特定
    1.とは異なり、個人がコントロールできる要素も含めて重回帰分析を行い、KPIに与えるインパクトを特定する手法を学びました。証券マンの例で行くと、メールや電話、手紙等の営業アプローチがある中で、どのアプローチ重視で行くと営業成績が上がりやすいか?といったことをデータから判断する手法を学びました。
  3. 特定施策のKPIへのインパクトの特定
    2.の分析は理解しやすくわかりやすい一方で、KPIに影響する要素がわかっていないと正しく分析できないという欠点があります。証券マンの売上に、実はFinanceの勉強時間が影響していたとして、その事実を見過ごしたまま分析すると不正確な分析結果となります。
    そこで、データセットのランダム化処理というのを行い、重回帰分析を実施すると、特定施策のインパクトを切り出すというアプローチも学びました。授業では、コンサルタントを入れた前後での生産性の上昇幅の分析を行いました。
Finance Ⅰ

企業やプロジェクトを定量的に評価することを目的とした授業でした。Financeは大学・実務である程度経験があるためボンヤリと聞いていましたが、企業価値評価(DCFやマルチプル、Free cashflowの計算等)の基礎で理解があやふやだったところを補強してくれた様に思います。

授業以上に、宿題として出されるグループワークの課題が結構難しく、授業以上に難しい課題を与えて学生をStretchさせ、評価は甘くつける、という日本ではあまり見られないアメリカの授業スタイルに慣れるのが大変でした。毎週の様に取り組んだグループワークはアメリカ人3人、メキシコ人1人と、当初はコミュニケーションで難儀しましたが、答えをもった上できちんと伝えれば自分の意見を汲んでくれるナイスガイばかりで、Global環境での仕事の仕方みたいなものを学べた様に思います。

Financial Reporting and Analysis

必修の授業をWaiveして履修した、発展的な内容の会計の授業となります。必修科目の場合減価償却とは…等基本コンセプトから学ぶと聞きますが、こちらはそれらの理解をベースとして、企業はどの様な項目をmanipulateして会計数値にお化粧をしていくのか?という点を明らかにしていくことに主眼がありました。

正直米国会計基準学んでもな…という声が頭の片隅にはありましたが、米国の有報(10-K)を見ることは今後もきっとあると自分を奮い立たせて授業に臨みました。正直今後のキャリアでどう役立つかいま時点ではイメージできませんが、ありがちな不正を学んだのは知的好奇心としては面白かったです。

例:M&A後、減価償却があるAssetの評価を切り下げてのれんに上乗せし、償却によるPL負担を減らす、等

全体を通じて

授業全体を通じて感じたのは以下2点です。

  1. 分析的、数理的な科目ほどやりやすい
    Finance、Analytics、Accountingは何れも問いに対する答えとロジックが自分の中で整理できていれば十分ディスカッションに参加できますが、答えが一意に定まらず自分の意見と事例を投げ合う、Strategyの様な授業は厳しいと感じました。授業内やグループワークでの発言機会という点でもそうですが、テストや課題も大量のReading+Writingをすることになるため、授業を通じて英語力(Reading/Listening/Speaking/Writing)が授業内でのパフォーマンスに与える影響が大きかった様に思います。
    同級生はアメリカ型の教育環境でトップを走ってきた学生ばかりなわけで、正直ソフトな議論はこの2年間で追いつける様には思えないので、自分の得意な土俵で戦うことが大事になりそうです。そこで、今後何かプロジェクトに取り組む時は分析的/数理的なTaskを取りに行こうと思います。
  2. ドキュメントでのアウトプットは比較的貢献しやすい
    グループワークをやっていた当初、Wordでのアウトプットを出すときもNativeの方が早いし良い文章を書けるだろうと及び腰になっていましたが、そうこうしている内に自分が何の価値も出せないままグループワークが終了という場面が何度かありました。
    一度Write-upの全体を自分でやってみたところ、ほとんど修正無いままチームの成果物となったこともあり、多少表現がAcademicでなく文法ミスがあったとしても、伝わる文章が書けていれば良いのだなと気づきました。たくさん書いている内にスピードも上がるでしょうし、グループに貢献しているのが目に見える作業なので、来学期以降はより文章でのアウトプットを出していきたいと思いました。

今学期の成績自体は恐らく凡庸(平均少し上ぐらい?)に終わった気がしていますが、成績以上に、どんなTakeawayがあったかは今後も定期的に振り返りつつ、ブログに残しておきたいと思います。

才能と努力について思うこと

海外MBAに進学してみて、同じ日本人の卒業生や在校生を見渡してみると、今まで出会ったことの無いような輝かしい経歴の人に少なくない頻度で出会います。名門中高一貫校や海外のBoarding Schoolから海外名門大学、外資系の投資銀行や戦略コンサル、投資ファンドを経てMBAへといった、テレビで見る様な経歴の人が本当にいたんだ、としばしば思います。

彼、彼女たちの多くは当然ながら極めて優秀で、志が高く、視野が広くバランスの取れた人々で、その上人間味もあって素晴らしい人達なのは間違いないです。ただその一方で、才能・努力といったものに対する考えで、あれ?と感じることが少なくない頻度で起こります。彼、彼女たちは言う訳です。「自分には才能があり、更に努力をしてきた結果が今の自分であり、正当な対価を受け取る権利がある」「意識的な選択と労苦の結果今の立場に辿り着いたのだから、周囲が羨むのは筋違い」と。

「才能と努力」の正体

それを聞くと、ちょっと待ってくれよと自分としては言いたくなります。田舎の中学校で必死に定期テストを勉強して地元で一番の公立高校に入った時、部活をしながら大学に受かるのが至高とされる中で必死に部活にも勉強にも取り組み大学受験を終えた時、自分の世界に海外での教育や外資投資銀行やコンサルというものは一切登場したことはありませんでした。お金だったら奨学金を使えば…みたいな話は解決策にはなりえません。人間、見えないもの、知らないものに対して努力をすることは出来ない訳ですから。親も、親戚も、友人も、教師も、自分の世界を構成する人全員の頭の片隅にも無いものについて、田舎の中高生が認識してそれに向かって努力することはある種の奇跡とさえ言えます。万一テレビでそんな話を聞いていたとしても、自分にとってそういった世界は、芸能界と同じぐらい遠い世界のものとして処理されていたと思います。

別に自分が特別に不幸だったなんてことは全く無くて、寧ろ勉強と部活を応援してくれる、素晴らしい両親、教師、友人に恵まれて育ちました。でも、だからこそ、自分の才覚と努力だけで人生を作ってきたと感じている一握りのエリートには、どのぐらい偶然が影響しているか考えてみて欲しいと思っています。親が用意してくれたSAPIX鉄緑会、名門進学校、幼いうちの海外経験、社会の第一線で活躍する人との繋がり…。それらから着想を得て努力をしたのであれば、それは本当に自分の才能と努力だけで獲得したものと言えるのか?と。

自分自身にしても、両親が用意してくれた環境と偶然が掛け合わさって生まれた状況を前に、努力してきたに過ぎないと感じています。両親の勧めで地元で一番の高校を受験し、高校では教師の勧めで東大を受験。高校の同窓会の中で総合商社の方と出会って興味を持って就活を進め、商社の先輩の背中を追ってMBAまで来ました。一つ一つの過程で努力をしてきたことは間違いありませんが、目の前に与えられた変数の元を辿っていくと、両親が用意された環境と、偶然の掛け算の結果生まれたものに過ぎないと気づきます。どこか一つの前提が崩れていたら、今頃自分の人生が悲惨なものになっていても、何も不思議ではありません。

格差について思うこと

自分が何を言おうと格差は存在していて、比較的フラットな日本社会でも着実に分断が進んでいます。都心における小学受験/中学受験の熱が冷める気配はありませんし、首都圏/関西圏の超名門校から海外の名門大学に進学する流れも、不可逆的なものではないでしょうか。そして20代を迎えたエリートたちは、自分の才能を認めてくれる器が日本社会には存在しない、と嘆くことになる訳です。

ここに至っては、更に分断を加速することになろうと、一部のエリートに向けたキャリアパスを、日本においても充実させていくしか無いのではないのだと思います。いくら日本社会が平等なキャリアパスを志向しようと、アメリカにはより優れたキャリアチャンスが存在しており、今の仕組みで日本に定着してもらうのは困難です。如何に格差が定着しようと、大企業のマネジメントやプロフェッショナル職、起業家として社会に価値を生み出し、高額な税金を払ってもらい、社会に還元してもらうのが、全員がハッピーになる道ではないでしょうか。

そして、これは自分の心情的なものですが、恵まれた人たちはそのことを自覚し、社会に対してPay backする意識を持っているべきだとも思います。アメリカで寄付の文化が盛んなことは格差社会の裏返しなのだとすれば、日本でも格差が広がるにつれて、幸運な人々が社会に富を還元するような仕組みが広がっても良いように感じます。

長文になってしまいましたが、格差についてどう考えるかという点は、周囲のアメリカ人や留学生にもどう感じているかを話してみて、自分の考えを整理していければと思います。

FOMOと秋学期の目標設定

MBA生が陥り易い症状として、FOMO(Fear Of Messing Out)なるものがあります。周囲と自分を比較して、自分はやるべきことをしていないのではないか?という不安感に襲われることを指しますが、私も例に漏れず、ここ数日FOMOで悶々としておりました。

私は賭博黙示録カイジが大好きなのですが、カイジがギャンブルで上手くいかない状態を指して「考えに重いところがない」という表現がされることがあります。麻雀でもポーカーでもいいのですが、自分の中での優先順位に照らした戦略がなく、場当たり的になっているという意味で使われているのですが、FOMOもこれと似たような話だと思っています。結局の所1日は24時間で1週間は168時間でしか無く、タスクに軽重をつけてスケジュールを作っていくしか無いのですが、自分にとって大事なことが分からず、周囲が何か大事そうなことをしている、という時に感じる焦燥感こそが、FOMOの正体なのだと思います。

ではなんでMBA生はFOMOになりやすいのか?と考えると、MBAには全く異なる土俵で戦ってきた人間が一挙に大集合し、分野によっては自分の遥か先を行く凄い人がいる訳です。その上そういった人は自分が出来そうにもないクラブの幹部や授業でキレキレの発言をしていたりします。そんな中でGet out of comfort zone!と学校/周囲からの叱咤が飛んできたりもするので、正に自分はやるべきことをしていないのではないか?とFOMO状態になりやすい構造があるのではないか、というのが私の考えです。

冷静になって考えると、言語/文化的ハンデもある中で特定分野をひた走っている人々と同じことが出来るはずが無い一方、私自身渡米前のハイモードで目標設定をぶち上げてたりもしたので、理想と現実のギャップにがっかりしていたりもしました。目標設定自体は良いのですが、いきなり全てが思い通り行くはずもないので、一先ず秋学期(12月まで)は少し目線を下げた目標設定を置いて時間を使っていこうと思います。

shoshimin.hatenablog.com

  1. Group work/Class participationを不自由なく行える様になる
    秋学期が始まって1ヶ月程度ですが、漸く徐々にGroup work/Class participationに慣れてきたというのが現状です。授業での発言は予習をきちんとして、教授の話の流れを読みながら然るべきタイミングで挙手する、という音ゲーのようなものという悟りを得たので、徐々に楽になって来てはいます。議論の応酬が始まると参加が難しくなる(音ゲーに対して、こちらはラップバトルのイメージ)ので、学期末までには上手く自分の意見を差し込んでいけるように出来ればと思います。
    このあたりは場数が物を言うと思うので、Stock Pitch等のコンペに出るなど、積極的に他の学生と協働する機会を取りに行けたらなと思います。
  2. 2年間の核となる友人のネットワークを作る
    渡航以降、ランダムで5-6人のCoffee Chatをひたすら行う、謎のアメリカ式の巨大ゲーム大会等、hard-core純ドメ留学生には楽ではないイベントが続きましたが、当面この手のイベントはなるべく回避したいと思います(Kellogg来といてそれで良いのか、感はありますが。。。)。この手の大型イベントは友達を作るものではなく名前を知るために行くんだ!とSocial mind旺盛な友人は言っていましたが、どう考えても時間との投資効果が悪いので、思い切って切るつもりです。
    それよりも、腹を割って話せる、卒業後も続く良き友人がどれだけ出来るか?のほうが大事な様に思うので、気があったタイ人、インド人、ブラジル人等の友人と先ずは良い関係を作り、少しずつ自分にとって居心地の良いネットワークを広げて行ければなと思います。
  3. 英語のコミュニケーションに慣れる
    劇的な変化は無いですが徐々に前に進んでいる感はあるので、引き続き勉強継続していければと思います。毎日1-2時間等纏まった時間英語でコミュニケーションをとる、週2で英語コーチとVocabulary Buildingをする等、コツコツ積み上げて行ければと思います。

上の目標設定+授業の内容理解+リクルーティングをきちんと進めていければ、まず秋学期は良しとして、無理筋なリーダーシップの機会に手を出すか迷って悶々とする、等はなくしていこうと思います。

notetakingの方法についての検討

大した話ではないですが、予習のために空けておいた貴重な午前中をノートテイク方法の検討に割いてしまったので、ここにまとめて供養しておきます。大した深さの検討でもないです。

発端はKelloggのプリンターとPCの相性が悪く、毎週大量に出てくるreading課題(全部合計で200p程度)を印刷しようとしたところ、度重なるエラーに見舞われてしまっておりました。これが2年間続くのか?と思うと、私の時給(無職ですが)換算で失う時間と引き換えにしてiPadを導入、全てペーパーレスにした方が経済的にも正しいのでは?と考え始めたのが今朝のことです。

実際に調べだしてみるとMBA生ならiPadは必須だよねという記事も複数出てきて大変心を動かされたのですが、結論、一旦紙での印刷を継続しようと思います。

  1. 資料を印刷せず、手持ちのTouch対応のWindows PC/iPad/Surfaceを使ってタッチペンでPDFに直接書き込み
    こちらだと、印刷自体の手間が省ける+自分の思考含めてデータが全てオンライン化されるので便利かなと思いましたが、以下が引っかかりました。
    ・PDFを取得、保存する手間は依然として発生する為、印刷までのPC操作の工数は大差なし
    ・対面授業ではTouch対応のWindows PCがZoomアクセスに使う前提のため、別途iPad/Surface+タッチペンを購入する必要あり。
    ・デバイス持ち込み不可の授業も一部存在し、授業によってノートテイク方法が分かれるのは難儀
  2. 全て印刷
    プリント自体に時間を要することが最大のネックでしたが、Kelloggのプリンタードライバー(Kprintとかいうやつ)を再インストールしたら一旦解決しているので、こちらでいこうと思ってます。一つ一つプリントするのに時間が掛かるのもストレスでしたが、Explorerから一括プリントすれば然程時間がかからないことに気づき、今後はこちらで多少なり時短していければと思います。
    又、印刷自体は学生寮の為無料、プリンターもそこそこの性能で印刷時間自体は速いことも踏まえ、やはり当面印刷対応で良いかなというのが現状です。

ということで一旦対応なしですが、今後プリンターのエラー問題が再燃した場合は、iPad/Surface+タッチペンの購入を再検討せねばなという感じです。